■三浦半島公園圏構想について
神奈川県参事:大橋 謙一

 この度の標記テーマの掲載は、5月20日総会終了後(社)神奈川県造園業協会及び(社)日本造園業建設業協会神奈川県支部共催により開催された、神奈川県参事大橋謙一様のご講演を基にご寄稿を賜ったもので大変ご示唆に富んだ有意義なお話でございました。この実現に向け神奈川県・県議会私ども造園業界が協同して国に対する更なる働きかけが求められており、多くの県民・市民が早期実現を渇望しております。

1.はじめに
 三浦半島公園圏構想は、三浦半島国営公園誘致の検討の中でその必要性を感じて構想の具体化を研究してきているもので、半島全体を丸ごと「公園のような地域」にできないかという着想を育ててきたものです。詳細はむしろ今後になりますが、本日はその考え方を紹介したいと思います。



【左写真:熱弁する大橋参事】
2.首都圏に拡がる緑のネットワークについて
@自然環境の総点検
 都市再生の一環で、首都圏の自然環境のあり方を協議するため、国土交通省や環境省のほか都県市で構成される「自然環境の総点検等協議会」ができました。三浦半島地域は、平成14年7月に「保全すべき自然環境」として抽出された25ゾーンの1つに選ばれました。さらにその中での6つある先行検討地域の1つにも選ばれ、平成15年1月から9月までワーキンググループを設けて、地域の現状や課題、今後の施策の方向性を検討してきました。

A緑のネットワーク
 こうして選ばれた25ゾーンをネットワークする2つの環状の緑のリング(内陸部の環状と東京湾岸の環状)を構想すると、三浦半島はこの2つのリングの要として重要な位置を占めます。三浦半島は、首都圏全体を視野に入れた「緑のネットワーク」のモデル的な施策の展開が可能な地区であると考えています。(右図)

B三浦半島の施策の方向性
 先ほど紹介した各地の検討地域の成果も踏まえ、協議会では、本年3月「首都圏の都市環境のグランドデザイン」を策定しました。三浦半島に関係する部分としては、「総合的な取り組みとして(仮称)三浦半島公園圏構想の策定推進」や「国営公園構想も踏まえ半島の自然環境の保全と活用拠点設定の検討を行う」など、地元の意向も踏まえた記載がなされました。
3.三浦半島の現状について
 三浦半島には、北から、池子の森、二子山、大楠山、武山、小網代の森、観音崎などの3,000haもあるような広大な樹林地が残されています。一方、相模湾や東京湾に面し干潟・岩場・砂浜などの多様な海岸環境が各地に点在しています。植生は、明治前期には半島南部でクロマツが75%も占めていましたが、その後二次林が増え、今は照葉樹林に移行している状態です。しかしながら、水田も減少していることから、植物の多様性が減少しており、そのため鳥や昆虫など小動物も減少して、自然環境としての魅力の低下が続いています。
4.国営公園構想(広義)について
 県は市町と共同して長年国営公園の誘致を進めてきましたが、各市町独自の推薦地区があることから、誘致候補地を具体には設定していませんでしたけれど、昨年、各市町の意向も踏まえ、方向性をまとめました。それは、「大楠山地区」を〈国営公園候補地区>とし、「二子山地区」と「小網代の森地区」を〈国営公園連携地区>にし、「池子の森・神武寺地区」を〈将来位置付けを協議する地区>とし、4地区をまとめて「広義の国営公園構想」としました。これは、複数の緑の拠点があることが三浦半島の大きな特徴で、この点をアピールするためにも、4地区で構成したものです。
5.三浦半島公園圏構想について
 その上で、三浦半島全体を展望して国営公園に新たな役割を期待することにしました。従来、国営公園に限らず、都市公園は区域内の整備や維持管理の充実を図りますが、公園の外側へは関与が弱いのです。ところが、三浦半島には多くの都市公園や地域制緑地、農地、そして海などの資源があります。であれば、新しい国営公園としては人材育成やプログラムの策定・活用などにより、公園の外へ公園の活動が滲み出してくるような中核的な役割を期待したい。国営公園を中心に幹線道路や散策路を整備し、半島全体に利用が進むような仕掛けも考えていきたい、と思います。

 半島内の多様な「みどり」に着目して、また、新たな緑の創造も含め、半島の「水と緑のネットワーク」の中核に国営公園を考えています。
幸いにもこうした「みどり」や海岸、博物館などを拠点にしてすでに市民の活動や学校、事業者などの活動も進んでおり、こうした活動をより活性化するような構想にまとめていきたいと考えています。

 県としては、この春にまとめた総合計画「神奈川力・プロジェクト51」にも、「三浦半島国営公園の誘致」と「三浦半島公園県構想の策定・推進」を位置付けており、その実践を推進していくことにしています。(上図)
6.おわりに
 現在は大きな転換点であります。公園の量的な充足が進む中で自治体は財政難であります。また、行政内部では技術職員が高齢化し減少しています。今後、仕事のやり方などで大きな変化が予想されます。さらに、市民との協働が進んでおり、設計・工事・管理なども今までにはない方法が次々に出てきます。この業界が「植木屋」から「公園建設業」に代わったように、これからは「環境創造・自然再生業」に転換していく時期なのかもしれません。そのためにも業界の皆様が新しいことを勉強し、技術力を高めて、業界の明日を切り開かれることを期待して、本日の講演を終わりたいと思います。


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