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■かながわ「邸園文化圏再生構想」への取り組み |
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神奈川県県土整備部都市整備公園課 小 松 雅 一 |
みなさんは、湘南と聞いてどんなことをイメージされますか?湘南文学、湘南サウンド、海とみどりの良好な住環境の郊外住宅地や、また比較的新しいところでは、湘南ナンバーやマリンレジャーなどでしょうか?
湘南は全国的にもブランド力を持った地域です。では、これらの良好なイメージはどのように形成されてきたのでしょうか?それを探ると、明治期以降形成された別荘・保養地に行き着きます。

【旧大隈重信邸(大磯町)】 |
相模湾沿岸地域一帯は、明治期から別荘地・保養地を形成し、首都圏で活躍する政財界人、文化人らが滞在し交流する地域として発展し、様々な文化を発信すると共に、歴史的建築的に高い評価を受ける邸宅や庭園を数多く残してきました。
その歴史的蓄積は、緑豊かで閑静な住宅空間や、湘南が育んだ文化、音楽、スポーツなどの湘南文化として、今も息づいています。しかしながら近年一方では、建物の老朽化や相続または、企業の資産処分等で失われていく物件が多くなりつつあることも事実であります。 |
こうした中、邸宅と庭園の保全活用に向けた取り組みとして、「邸園文化圏再生構想」がスタートしたのです。
この構想は、相模湾沿岸地域の伝統を現代に甦らせ、貴重な遺産である「邸園」(別荘邸宅+庭園)を活用し、来訪者と地域住民による多彩な交流により、県民・行政・企業協働で「邸園文化」を発信し滞在型交流を推進することを目指すものです。
職員自らが発案し実施する職員提案事業として採択されたもので、3年間という時限の中で、事業化に向け取り組まれています。
平成19年度まで取り組む邸園文化圏再生構想の内容は、次のとおりです。
1.(仮称)地域交流館の実験的運営 |
地域の住民団体・行政・企業等と協働で、既存の邸園を活用した来訪者と地域住民による多様な研修・交流・制作等の拠点「(仮称)地域交流館」を実験的に運営します。
まず、葉山等にて物件を借り上げ、邸園に関する地元のNPO等との協働により、邸園文化体験・歴史を学ぶ企画・地域の芸術家等の発表の場・音楽会・芸術展・講座等での活用による運営実験を行います。 |

【旧陸奥宗光邸(大磯町)】 |
2.(仮称)大磯近代歴史文化公園ゾーンの形成着手 |
特に大規模な邸園群が集積している大磯では、近現代史の政治・文化の舞台となった大邸園という大磯固有の地域形成の風土に着目して、公園緑地施策とも連携しながら、海岸域から高麗山に至る広域観光型の(仮称)大磯近代歴史文化公園ゾーンの形成に着手いたします。
そのため、企業所有の邸園等を事例として、公開型活用に関して協働による体制づくりに向けた検討・働きかけを行うものです。
3.滞在型交流の推進 |

【鎌倉文学館(旧前田邸)】 |
邸園、地場産品(サービス)、地元でのまちづくり活動などと首都圏・海外のニーズをコーディネートする組織を、住民団体・行政・邸園所有者・邸園利活用企業(飲食関連企業等)などにより設置して邸園の有効利用・滞在型交流を推進して行きます。
この3つの取り組みに着手しており、平成17年度には、地域交流館運営に向けた所有者との交渉や14市町を網羅した、邸園所有者へのアンケート調査等の基礎的作業を進めてまいりました。 |
そして、今年度の取組内容ですが、
(仮称)大磯近代歴史文化公園ゾーンでの学識経験者や地域住民等の代表から構成する検討委員会を立ち上げ、景観形成とまちづくりの視点と、所有者と協働して公園緑地制度を活用し、景観重要建造物とその庭園を如何に保全し、活用していくのかの検討に入ります。
また、秋には「(仮称)邸園文化祭の開催」と称して、相模湾沿岸の幾つかの自治体で、実際に保全・活用し、又は所有企業や個人の方々の協力をいただき、今後の保全・活用のためのケーススタディーとするためのイベントを地元自治体やNPO等の協力により取り組んで行きます。
最後に、相模湾沿岸地域一帯はNPO活動が盛んであり、これが新たなインフラの一つであると捉えられています。県が進める「邸園文化圏再生構想」では、建物のみならず、庭園を守り育てることも重要な役割でありますので、造園業を営む皆様の協力が不可欠であります。この構想についてのご意見、ご鞭撻をよろしくお願いいたします。 |
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