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3月23日(木)ホテル横浜ガーデンにおいて神奈川県のご後援を得て「かながわのみどりを造り、育てる」シンポジウム並びに「集い」を開催したところ、尾高副知事、神奈川議長をはじめみどり議員連盟議員、神奈川県・市町村公園・緑化事業担当者や会員含め172名が参加し、示唆に富んだ有意義な「シンポジウム」と「集い」であった。
シンポジウムでは、桐蔭横浜大学医用工学部特任教授涌井史郎様をお招きし、愛地球博が実証したロハスな社会への方向(ロハスな社会を構築する造園業の役割)という演題で基調講演をいただき講演終了後同テーマで涌井教授のコーディネータのもと日本造園建設業協会事業委員長高村芳樹様、NPO法人「みどりによる都市づくりを推進する会」副理事長吉澤和久様、神奈川県造園業協会冨田改教育研修委員長、同原伸定県域青年部長、神奈川県県土整備部都市整備公園課課長代理本洋一様5人のパネリストによるデスカッションが行われた。 |
シンポジウムで講演された涌井史郎氏 |
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涌井教授の基調講演の要旨は左記のとおりで今後の造園業のあるべき役割をご示唆いただき有難うございました。
造園という職業領域はそもそもが「公の働き」のみならず広く市民社会にも支えられてきた歴史的経緯がある。
歴史を振り返ると、我が国の国土に生活することそれ自体が、厳しい自然災害と共存せざるを得ぬ宿命にあり、また一方その自然災害がある種の美しい国土を形成してきたことと表裏一体の関係の中で、「農の世界」そして都市もまた、常に自然との「折り合い」を模索し、この国土に安住する知恵を磨いてきた。
それゆえ自然に対する尊敬・敬愛が、農の世界と相俟って、都市に世界に類例のない庭園文化を育み、またそうした庭園文化に依拠して都市が形成されてきたと見ても良い。よって人々は私の空間に縁があるのは当然と考え、その結果パブリックのみどりに対する関心を抱く必要が無かった。それで充分に都市のみどりが確保されてきたからである。 |
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パネラーの方々 |
しかし近代に入り、都市の高密化に起因して私のみどりが姿を消すに従い、それと平行して都市のみどりは裸同然となり、都市生活の環境は悪化の一途を辿る一方となってしまった。
こうした状況がわが国の都市を取り巻くみどりの特質と考えてよい。今、景観・都市防災・自然再生が、パブリックの手により都市に再生されることが人々に最も求められている所以はここにある。しかしながら、残念な事に我々は、「私」の領域に於けるみどりの維持の経験しか持ち合わせず、「公」の領域に於けるみどりとの付き合い方や維持のあり方に対するノウハウは未だ経験不足と言わざるを得ない。
厳しい財政事情や、義務と負担の新しい関係を成熟した我が国、そして高齢化した社会に当てはめるならば、まさに今みどりとの関係から始まる「私」と「公」の間にある、我が国固有の伝統的「共」に着目をして、新たなる「共」の再構築を目指す時代が到来したと考えるべきであろう。
造園建設業は、そもそもが市民社会のニーズに対応して育った業種である。且つ又地域の自然を農の世界の人々と同様に理解している技術集団である。こうした特質を持つ、造園産業界は今こそ積極的に「市民社会と公共団体とのバインダーの役割」を担い、市民社会の求めるところに基盤を置いて活動すべき時期にあることを認識すべきであろう。また最もそれにふさわしい業種であることを自覚し再確認すれば、自ずとその未来が拓ける事を認識したい。 |