念願のヴァン猫に会えた。トルコ各地の町同様、ヴァンの町にも絨毯屋が多いが、その中のある店に、文字通り招き猫として、粗末なカゴに入れられていた。オッド・アイ、日本的に金目・銀目、左右の瞳の色が違うヴァン名物の珍しい猫である。接客がもう面倒なのか、カゴから出てはくれなかった。
出発にはまだ時間があるので、ホテルから出てヴァンの町を散策した。
昨夜、冷やかすだけで店を出た絨毯屋の前は、顔を横に向け足早に通りすぎた。
まだ飲み水を確保していないことに気づき、通りに面した一軒の小さな店に入る。奥に長い三方の壁には段々の棚があり、様々なスナック菓子が丁寧に積み上げられていた。店内は意外と小ぎれいにしている。10代の少年が2人店番をしていた。
ペットボトルを持ってレジの前に立つと、少年達が緊張しているのがわかる。
東洋系の人種など滅多に見ないのだろう。気がつくと、いつの間にか1人の紳士が私達の傍に立っていた。紳士は、上下の揃った背広を着てネクタイをきちんと締めている。
町の住民たちと風采が違う。白い豊かな一文字の口髭と、濃い眉毛が特徴の紳士には、どことなく気品があった。どうやら少年たちの態度からこの店のオーナーのようだ。紳士が手招きをして店の奥の棚を指差す。 |

【ヴァンの町で出会った温厚なクルド人の店主】

【猫好きの私にとっては感動の対面左右の瞳は
確かに違っていた】 |